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老後を夫婦で迎える前に!「セカンドライフプラン」の相談

不安を解消し、二人の「生きがい」をデザインする対話術

定年後のセカンドライフは、平均寿命が延びた現代において、人生で最も長い二人だけの期間となります。しかし、多くの夫婦にとって、老後の計画は「漠然とした不安」として立ちふさがります。この不安を解消し、夫婦二人が心から「よかったね」と言える豊かな未来を築くためには、リタイアメント期を迎える前に、具体的な目標と計画を共有することが不可欠です。

この記事では、ファイナンシャル・プランナー(FP)の視点から、夫婦が話し合うべき核心的なテーマ、未来を「見える化」する方法、そして意見が食い違った際の円満な対話術について、分かりやすい言葉で解説します。

セカンドライフの不安を「期待」に変えるマインドセット

夫婦のセカンドライフに潜む「3つの漠然とした不安」

3つの漠然とした不安の一つ目は「経済的安定の喪失」、すなわちお金の心配です。二つ目は「健康の喪失と自立性の低下」、つまり病気や介護への不安です。そして三つ目は「社会からの孤立と役割の喪失」であり、これは夫婦間の関係性の変化や、社会的な居場所を失うことへの懸念です。

老後のプランニングは、これらの不安要素を特定し、解消することが目標です。計画の真の目的は、単なる節約や貯蓄目標の達成ではなく、経済的な安心(お金の安心)を基盤として、人生の生きがい(心の満足)を追求することにあります。具体的な目標として、「何歳まで」「どこで」「どのような生活を」「どれくらいの費用で」送りたいかを夫婦で明確にすることで、漠然とした不安は、目標達成に向けた具体的なタスクリストへと変換されていきます。

話し合いを始める最適なタイミング

夫婦でセカンドライフプランを話し合う時期は、やはり「できるだけ早い方が良い」というのが私の見解です。

特に子育て世代(45歳から65歳)にとって、親の介護や相続の問題は突然発生する可能性が高く、その時点で慌てて準備を始めても遅すぎるケースが多くあります。自分たちの老後も同様であり、健康で判断能力があるうちに、公的制度の調査や、将来的な住まいの希望を確認しておくことが重要です。

FPからの提案として、夫婦の対話を始める理想的なタイミングは、50代に入り、お互いのキャリアのゴールが具体的に見え始めた時期、あるいは大きなライフイベント(例:住宅ローンの完済、子どもの独立と教育費の区切り)を迎えた時が挙げられます。この時期であれば、まだ現役収入があり、必要な資金対策(資産運用や保険の見直し)を講じるための時間的余裕があるためです。

【夫婦で話すべき3つのテーマ】お金、住まい、働き方

老後の未来を具体的に描き、計画を立てるために、夫婦で必ず話すべきテーマは、「お金」「住まい」「働き方(生きがい)」の3つです。

お金の安心設計(長寿時代の家計防衛策)

まず、公的年金が老後の生活をどこまで支えてくれるのか、現実的な理解が必要です。

一般的に、会社員と専業主婦の標準的な夫婦世帯(片働き世帯モデル)の場合、公的年金の合計受給額は厚生労働省の令和6年度の年金額の例によると、月に約23.0万円(夫が約16.2万円、妻が約6.8万円)とされています 。総務省の家計調査年報によれば、この年金収入は、夫婦の一般的な日常生活費をほぼ賄える程度の金額です。

しかし、この金額はあくまで「基本的な生活」を維持するためのものです。年金で賄えない「ゆとりある生活費」、例えば旅行や趣味、外食などの費用(実態として月約5万円程度を取り崩しています)を確保するためには、自助努力による資産の準備が不可欠です。100歳時代を迎え、長寿リスクに備えるためには、ゆとり費や予期せぬ介護費用をカバーするため、「老後2000万円が必要」とされる自助努力の目安が浮上します。そのため、老後資金計画の焦点は、年金で賄えない「ゆとり費」と「介護リスク」をいかにカバーするかに絞られます。

下記の記事も参考にご覧ください。

貯蓄力を劇的に変える!固定費の賢い見直し

老後資金を効率的に準備するためには、収入を増やすよりも、支出、特に固定費を見直すことが重要です。節約効果は単なる引き算ではなく、長期にわたり効果が持続する「掛け算」として作用するためです。

まず見直すべき固定費の筆頭は保険料です。リタイア後は、万が一の死亡保障が不要になることが多いため、これを削減し、医療や介護に特化した保障への切り替えを検討します。次に通信費です。スマートフォンやインターネットの契約を見直し、低価格プランへの移行を検討することで、毎月の支出を大きく削減できます。

固定費の削減については、下記の記事もご覧ください。

また、日常的な支出においても、効率的な現金化と家計管理の手法を取り入れることが推奨されます。「ポイ活」(ポイント活動)は、キャッシュレス決済を積極利用することでポイントを貯め、これを生活費に充てることで、家計の管理を容易にし、節約効果を高める具体的な手段です。

最大の壁「医療・介護費用」への備え

夫婦の未来設計において、最も不確実性が高く、経済的な負担が大きいのが医療・介護費用です。

公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、介護が必要になった場合の平均期間は4年7ヵ月に及びます。その平均費用は、一時費用(住宅改修や介護用ベッド購入など)が平均47万円、月額費用が平均9.0万円です 。さらに施設介護を選択した場合、月額平均費用は13.8万円となります。

この高額な費用への備えとして、公的支援制度の理解が不可欠です。特に「高額療養費制度」は、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合、超過分が支給される仕組みであり、70歳以上の高齢者は世帯所得に応じて自己負担限度額が軽減されます 。この制度を事前に知っておき、適切な手続きを行うことで、予期せぬ大きな医療費負担に対する不安は大きく軽減されます。

さらに、健康維持そのものが最大の経済的防衛策となります。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠を心がける「セルフメディケーション」の実践は、生活習慣病の予防や改善を通じて、健康寿命の延伸と医療費の節約に直結します。また、健康診断や予防接種など健康増進の取り組みを行う人は、特定のOTC医薬品(市販薬)の購入費用について所得控除を受けられる「セルフメディケーション税制」の活用も検討できます。つまり、日々の健康への投資は、将来の数百万〜数千万円の介護費用を抑えるための、最もコスト効率の高い「戦略的金融行動」となるでしょう。

こちらの記事ではさらに詳しくご説明しています。

理想の住まいと資産活用(「終の棲家」の明確化)

現在の自宅に住み続けることを希望する場合、将来的な身体機能の低下を見越したバリアフリー化やリフォーム計画を立てる必要があります。一方で、自宅が広すぎる、管理が大変、あるいは生活圏と離れている場合は、思い切って住み替えを検討することも賢明な選択です。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームなど、ライフステージの変化に対応できる住居も選択肢に入れてはいかがでしょうか。

自宅という資産を老後資金に活用する方法として、リバースモーゲージが注目されています。

リバースモーゲージは、主に高齢者が自宅を担保に金融機関から資金を借り入れ、契約者(借主)が亡くなった後に自宅を売却することで借入金を一括返済する仕組みです。最大の強みは、住まいを担保に入れながらも、生きている間は住み慣れた家で生活し続けられる点です。また、一般的な住宅ローンと異なり、毎月の返済は利息のみとなるため、生活費のやりくりがしやすくなります 。特に住宅ローンの残債がある場合、リバースモーゲージに借り換えることで月々の返済負担を軽減できます。

リバースモーゲージは、住環境を改善したいが手元資金を使いたくない方や、自宅を子や孫に相続させる予定がない方に特に適しています。しかし、夫婦でリバースモーゲージを利用するには、リスクと対策を理解し、特に相続人との合意形成が不可欠です。

リバースモーゲージの利用は、自宅が将来的に売却されることを意味するため、必ず相続人に利用する旨を伝え、同意を得る必要があります。特に相続人への金銭的負担を回避するため、債務が遺族に引き継がれない「ノンリコース型」を選択することが、家族間のトラブルを防ぐ上で極めて重要です(住宅金融支援機構の「リ・バース60」では約99%がノンリコース型を選択しています)。夫婦がリバースモーゲージを検討する際は、子どもたちに対し、金銭的な負担をかけないための配慮としてノンリコース型を選ぶというメッセージを伝えることが、心理的な障壁を低減させます。

リバースモーゲージを詳しく解説した記事は下記になります。

生きがいと働き方(経済的安定と精神的充実)

定年後のセカンドライフで夫婦が直面しやすい問題の一つが、一緒に過ごす時間の急増による関係性の悪化です。夫が常に家にいることで、妻が「干渉しすぎる」と感じたり、家事の分担が変わらないことへの不満から夫婦喧嘩が増えるケースがみられます。

夫婦円満を維持する秘訣は、お互いに依存しすぎず、家以外の「居場所」を持つことです。仕事、ボランティア活動、あるいは熱中できる趣味を通じて社会とのつながり(ウェルビーイング)を維持することが、精神的な充実と夫婦の適度な距離感を生み出します。

60代からの多様な働き方と「社会とのつながり」

公的年金の給付が下がる傾向にある現代において、再雇用制度の活用や、60代以降も継続的に収入源を確保することは、経済的安定の柱となります。パートやフリーランスなど、体力や希望に合わせて多様な働き方を検討しましょう。

【見える化】ライフプラン表で二人の未来を「設計」する

ライフプラン表作成の意義:漠然とした不安の「数値化」

老後資金の不安は、その必要額が「見当もつかない」という不確実性から生まれます。この漠然とした不安を解消するための強力なツールが、未来の収入と支出を時系列で整理する「ライフプラン表」の作成です。

ライフプラン表を作成する過程は、単なる計算ではありません。夫婦の定年時期、旅行の夢、住宅のリフォーム、子どもの結婚・援助、そして介護リスクなど、すべての大きなライフイベントを時間軸に乗せて共有できます。これにより、夫婦の価値観が数値という客観的な事実に基づき明確になり、目線合わせが可能となります。

ライフプラン表の作成ステップ

ライフプラン表は以下の4つのステップで作成できます。

  1. イベントの洗い出し:
    夫婦の年齢に合わせて、定年年齢、年金受給開始年齢、住宅ローンの完済時期、リフォーム予定、そして平均余命を参考に介護が発生する可能性のある時期など、重要なイベントをリストアップします。
  2. 収入の計算:
    退職金、公的年金(夫婦それぞれの見込み額)、再雇用時の給与など、すべての収入源を時系列で計算します。
  3. 支出の予測:
    日常生活費、固定費(住宅、保険、通信費など)、イベント費用(旅行、レジャー)、そして介護費用(一時費用と月額平均)を予測します。この際、高額療養費制度などの公的支援も考慮に入れます。
  4. キャッシュフローの確認:
    毎年の収入から支出を引いた差額(収支)と、貯蓄残高の推移を計算し、目標とする年齢(例:90歳や100歳)で貯蓄残高がマイナスにならないか、資金ショートの時期がないかを確認します。

【円満な話し合い方法】意見が食い違った時のコミュニケーション術

老後プランは、夫婦の価値観が試されるテーマであり、意見が食い違うことは避けられません。感情的な対立を防ぎ、円満な議論を進めるためのコミュニケーション技術が求められます。

夫婦間の話し合いがうまくいかない原因の多くは、お互いが自分の意見を押し付ける一方通行のコミュニケーションになっていることです。

対立を避けるためには、まず「Iメッセージ」を活用して気持ちを伝えることが有効です。「Iメッセージ」とは、「私は○○だと思う」「私は〜という点で不安を感じる」というように、主語を私(I)にして自分の気持ちや考えを伝える方法です。これに対し、「あなたはいつもお金を使いすぎる」「あなたは計画性がない」といった相手を責める「Youメッセージ」は、相手の防御反応を引き起こし、議論を停滞させます。

また、意見が食い違った際は、まず相手の感情を「受け止める」姿勢を示すことが大切です。「そうだよね、あなたはそう思っているんだね」と、一旦相手の表情や態度から気持ちを読み取り、共感する言葉を伝えます。

コミュニケーションにおいては、相手を敬い、同じ目線で話す丁寧な態度が信頼関係を築きます。介護現場での高齢者との対話と同様に、分かりやすく頷くなど、肯定的な反応を示すことで、相手に関心を持っていることを態度で示してみてはどうでしょうか。心理的な安定こそが、家計管理の協力体制という経済的な結果に間接的に結びつきます。

建設的な議論のためのステップとテーマリストの活用

建設的な議論を始めるには、いきなり「いくら貯めたか」「いくら必要か」という金額の話から入るのを避け、まずはお互いの価値観や夢について語り合うことから始めましょう。老後、一番大切にしたいものは何か(例:健康、社会貢献、自由な時間、孫との時間)という感情的なゴールを共有することが、計画の土台となります。

漠然とした不安を解消するためには、話し合うべき具体的なテーマのリストを活用することが有効です。例えば、シニアライフカウンセラー協会などが提供するような、「住み替えの相場」「介護の希望」「遺言・相続」といった具体的な質問リストを参考に、夫婦の対話のきっかけを作りましょう。

【専門家の活用】FPがサポートする「夫婦の未来設計」

FP(ファイナンシャル・プランナー)は、人生におけるお金に関する総合的な専門家であり、特に老後資金の計画において、その役割は重要です。FPは、ライフプランニング、不動産、保険、税金、資産運用、相続といった6つの分野全てを横断的にサポートできます。

FPに相談する最大のメリットは、夫婦が抱える将来への不安を、具体的な「貯める金額」「使える金額」として明確化し、不安を具体的な行動計画に変えることができる点です。FPは、公的年金の見込み額を算出し、現在の家計の無駄な支出(特に加入している保険や通信費など)を見つけ出し、さらにiDeCoやNISAといった税制優遇措置を活用した効率的な資産形成のアドバイスを提供します。

また、ライフプランニングというプロセスは、夫婦が教育方針や老後の生活の価値観など、これまで深く話してこなかったテーマについて共通認識を持つ機会を強制的に作るという、コミュニケーション上のメリットも提供します。

FPが提供できる主なサポート内容

ライフプランニング
老後資金の必要額算出、キャッシュフローの見える化、目標設定

不動産・住宅
住宅ローンの借り換え、リバースモーゲージ・リースバックの活用検討

保険
老後を見据えた保険の見直し、介護・医療保障の過不足チェック

資産運用
iDeCoやNISAなど私的年金への配分、リスク許容度に基づいた投資戦略

相続・事業承継
遺言書作成の準備、子ども・孫への資金贈与方法の検討

FPに相談する際の具体的なステップ

FPへの相談は、一度診断を受けて終わりではありません。その後の「実行」と「継続的なサポート」までが重要です。

  1. 現状の正直な把握
    初回面談では、夫婦の収入、支出、資産状況、そして将来の夢や病気・介護に対する懸念など、すべてを正直にFPにお伝えください。FPには守秘義務があるため、ありのままを話すことが、夫婦に最適な提案を受けるための出発点となります。
  2. シミュレーションと提案
    FPは収集した情報に基づき、ライフプラン表を作成し、資金ショートのリスクや時期を明確にします。その結果に基づき、支出の見直し、資産運用の配分比率、そして不足資金のカバー戦略(自宅活用や働き方の調整)といった具体的な「治療方針」を提案します。
  3. 計画の実行と継続的なサポート
    提案内容を夫婦で共有し、行動に移した後も、FPは継続的なサポートを提供します。経済状況や健康状態は常に変化するため、定期的にプランを見直し、修正を加えることで、豊かな人生の実現を長期的に支援します。

まずは、大きな目標を設定する前に、小さな一歩として、夫婦でリラックスできる場所で、老後の「夢」について語り合ってみましょう。そして、その夢を実現可能にするために、FP(ファイナンシャルプランナー)という専門家を頼ることも選択肢の一つです。

SORAライフプラン事務所にお問い合わせの際は下記からご連絡をお願いします。