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【長期投資の鉄則】「ドルコスト平均法」を続けるために必要な行動原則

「投資を始めたいけれど、いつ買えばいいのか分からない」「暴落して損をするのが怖い」と、最初の一歩を踏み出せずにいませんか?あるいは、積立投資を始めたものの、日々の相場変動に一喜一憂してしまい、疲れてしまったという方もいるかもしれませんね。

そんな投資の悩みを解決し、長期的な資産形成を成功させるためのテクニックが「ドルコスト平均法」です。これは、投資のタイミングを分散させることでリスクを抑える、王道の手法なのです。

しかし、ドルコスト平均法は「知っている」だけでは意味がありません。「どんな時でも淡々と続ける」ことができて初めて、その真価を発揮するのです。

この記事では、ドルコスト平均法の仕組みをわかりやすく解説するとともに、なぜ多くの人が途中で挫折してしまうのか、そして最後までやり抜くための具体的な行動原則について、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から紐解いていきます。

「ドルコスト平均法」って何?リンゴでわかる魔法の買い方

まずは、ドルコスト平均法の基本的な仕組みを、身近な「お肉」に例えて理解しましょう。難しい金融用語は一旦忘れて、スーパーマーケットでの買い物をイメージしてみてください。

① 「定量購入」と「定額購入」の違い

あなたは毎日お肉を買うとします。お肉の値段は、日によって100gあたり、1000円だったり、1500円だったりと変動しています。

定量購入(数量指定): 毎日「200g」買う方法。

1000円の日も1500円の日も、200gずつ手に入ります。価格が高い時にも必ず買わなければならないのがデメリットです。

お肉の単価購入量購入額合計数量合計購入額
100g 1000円200g2000円200g2000円
100g 1500円200g3000円400g5000円
100g 1250円200g2500円600g7500円
100g 1500円200g3000円800g10500円
100g 1000円200g2000円1000g12500円

購入した合計は、12500円で1000g買えたことになりますね。

定額購入(金額指定): 毎日「2,500円分」買う方法。

お肉の単価購入量購入額合計数量合計購入額
100g 1000円250g2500円250g2500円
100g 1500円166g2500円416g5000円
100g 1250円200g2500円616g7500円
100g 1500円166g2500円782g10000円
100g 1000円250g2500円1032g12500円

こちらは定量購入と同じ12500円で1032g買えたことになり、32gお得に買えていることが分かりますね!

この後者の「決まった金額で買えるだけ買う」方法こそが、ドルコスト平均法なのです。

② 安い時にたくさん買い、高い時は少しだけ

この「定額購入」を続けると、どうなるでしょうか。価格が安い時には自然と購入量(口数)が増え、価格が高い時には購入量が減りますね。

その結果、長期間で購入単価を平準化(平均化)し、「金額が高くなっている時の購入」のリスクを自動的に回避できるのです。これが、「ドルコスト平均法は負けにくい」と言われる最大の理由であり、投資初心者にとって最強で、しかも簡単な投資手法となるのです。

なぜ続けられない?投資家の心理

理屈の上では完璧に見えるドルコスト平均法ですが、実際には多くの人が途中で積立を停止したり、解約したりしてしまいます。それはなぜでしょうか。答えはシンプルで、私たち人間に「感情」があるからです。

暴落時の恐怖:「もっと下がるかもしれない」

株式市場は、数年に一度、大きく暴落することがあります。ニュースで「〇〇ショック」「株価大暴落」といった言葉が躍ると、誰しも不安になるものです。

「今月も積み立てたら、来月もっと資産が減るのではないか」「一旦売って、底値で買い戻した方が賢いのではないか」という誘惑に駆られます。

恐怖に負けて積立を停止してしまい、結果的に「安い時にたくさん買う」というドルコスト平均法の最大のチャンスを自ら手放すことになるのです。

上昇時の焦り:「もっと買っておけばよかった」

逆に、相場が右肩上がりに上昇している時も要注意です。「もっと早く、たくさん投資しておけば大儲けできたのに」という後悔や焦りが生まれるでしょう。

欲が出て、毎月の積立額とは別に、手元の生活防衛資金まで一括で投資してしまいたくなります。

高値圏で大量に資金を投入してしまい、その後の下落局面で大きなダメージを負う「高値掴み」の典型的なパターンに陥ります。

投資を失敗させるのは、相場の変動そのものではなく、相場に翻弄される自分自身の心なのです。

暴落時こそガッツポーズ!「安く買える」メンタルの作り方

では、どうすれば感情に振り回されずに積立を続けられるのでしょうか。そのためには、相場の下落に対する「認識」を根本から変える必要があります。

下落相場は「バーゲンセール」

普段の買い物で、お気に入りのブランド品や食材が半額になっていたら、どう思いますか。「ラッキー!たくさん買おう」と嬉しくなるはずですね。投資信託や株式も同じです。

基準価額が下がっているということは、同じ1万円でより多くの口数(数量)を買えるということです。

暴落が起きたら、恐怖を感じるのではなく、「今は仕込み時だ」「安く買えてラッキー」とガッツポーズをするくらいのメンタルを持ちましょう。この時期にどれだけ多くの口数を集められたかが、将来相場が回復した時の利益の爆発力を生むのです。

「含み損」は将来の利益の源泉

積立投資を始めて数年は、資産評価額が投資元本を割り込む「含み損」の状態が続くことも珍しくありません。しかし、長期投資において、初期のマイナスは決して失敗ではないのです。

価格が低迷している期間が長いほど、安く買える期間が長いことを意味します。この期間をじっと耐え抜き、淡々と買い増しを続けた人だけが、その後の上昇相場で大きな果実を得られると言えるでしょう。

「ほったらかし」が最強!自動化で市場の波を乗りこなす

メンタルを鍛えることも大切ですが、もっと確実なのは、そもそも「判断しない」仕組みを作ってしまうことです。

クレジットカード積立で完全自動化

証券会社の口座にお金を入金して、毎月注文を出す…という手動の操作は、感情が入る隙を与えてしまいます。「今月は高いからやめておこうかな」という迷いが生じる原因になりますね。

そんな時は、クレジットカード決済による投信積立設定を行いましょう。一度設定すれば、給料日や相場の状況に関係なく、毎月自動的に買い付けが行われます。強制的に「忘れる」ことができる環境を作ることが、継続の秘訣です。

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評価額のチェックは「年に1回」で十分

スマホで毎日証券口座のアプリを開いていませんか。日々の細かい値動きを見ても、長期の積立投資の結果には何の影響もありません。むしろ、日々のアップダウンに一喜一憂し、ストレスを溜めるだけでしょう。

評価額の確認は、年末調整や確定申告の時期など、年に1回程度に留め、あとは趣味や仕事に集中して人生を楽しむことが、投資を長く続けるコツです。

投資のゴールは「20年後」と心に刻む

ドルコスト平均法は、短期間で大儲けするための手法ではありません。15年、20年という長い時間をかけて、市場の成長を享受するための投資のマラソンです。

今日の株価がどうあろうと、20年後のゴールテープを切る時には誤差のようなものです。「今はまだマラソンの5km地点。何があっても走り続けるだけ」と、長い時間軸で物事を捉えるようにしましょう。

まとめ:一般人が天才に勝てる唯一の方法

投資の世界には、プロの機関投資家や天才的なトレーダーが存在します。資金力も情報量も乏しい個人投資家が、彼らに勝つことは難しいかもしれません。

しかし、「時間を味方につけ、ドルコスト平均法で淡々と買い続ける」ことに関しては、プロも素人も関係ありません。むしろ、短期的な成果を求められない個人投資家の方が、有利な場合さえあります。

暴落が来ても、高騰しても、ただ静かに決まった額を積み立てる。この地味で退屈な作業こそが、将来のあなたに経済的な自由をもたらす黄金の行動原則なのです。今日から、相場を見る時間を減らし、自動積立に任せて、ゆったりとした気持ちで投資ライフを歩んでいきましょう。

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