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【令和7年年末調整】新設された控除や改正点について解説します

毎年恒例の年末調整の時期がやってきましたね。令和7年(2025年)は税制改正により、大きな変更点がありました。特に、皆さまの手取り額に直結する「基礎控除」の見直しや、新しい控除である「特定親族特別控除」の創設は、絶対に確認すべき重要ポイントと言えます。

令和7年年末調整の最重要ポイント:3つの大きな改正

令和7年分の年末調整では、主に次の3つの改正が実施されます。これらを正確に理解することが、賢い節税への第一歩となるでしょう。

1.所得税の基礎控除の見直し
2.給与所得控除の最低保障額の引き上げ
3.特定親族特別控除の創設

「基礎控除」「給与所得控除」「特定親族特別控除」について掘り下げて確認していきましょう。

所得に応じて変動!「基礎控除」と「給与所得控除」はどう変わった?

所得税を計算する上で、すべての人に適用される「基礎控除」と、給与所得者に適用される「給与所得控除」が改正されました。

合計所得金額に応じた「基礎控除」の見直し

所得税の基礎控除とは、年間所得から一定額(基礎控除額)を差し引くことで、課税される所得を少なくし、税負担を軽くする制度です。
一定の所得以下であれば、誰でも適用される控除となります。

令和7年の法改正では、合計所得金額132万円以下の場合、控除額が改正前の48万円から95万円(令和9年分以後は58万円)に引き上げられることになりました。また、132万円超の所得者でも、所得に応じて段階的に増額されています。(令和7年・8年適用)

合計所得金額令和7年・8年改正前
132万円以下95万円48万円
132万円超 336万円以下88万円48万円
336万円超 489万円以下68万円48万円
489万円超 655万円以下65万円48万円
655万円超 2,350万円以下58万円48万円

※令和9年以降は所得132万円以下は控除額95万円、132万円超は控除額58万円となる予定。

この改正は、低所得者層の税負担を軽減することを目的としています。年末調整では、ご自身の合計所得金額に応じた正しい控除額が適用されているか、「給与所得者の基礎控除申告書」の内容をしっかり確認してください。

給与所得控除の最低保障額の引き上げ

給与所得控除とは、会社員などの給与所得者が、経費の代わりに受けられる控除のことです。このうち、給与の収入金額が190万円以下の人に対する給与所得控除額が、一律65万円の控除へ引き上げられました。

給与の収入金額改正後(令和7年)改正前
162万5,000円以下65万円55万円
162万5,000円超 180万円以下65万円収入×40%‐10万円
180万円超 190万円以下65万円収入×30%+8万円

これは、年収が少ない層の税負担をさらに緩和するための措置です。この改正に伴い、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」も改正されているので、会社の経理担当者側での計算にも注意が必要となるでしょう。

新設された「特定親族特別控除」とは?申告漏れに注意

令和7年年末調整における最大の目玉は、「特定親族特別控除」という新しい控除の創設です。

対象となる「特定親族」の条件

特定親族特別控除の対象となる「特定親族」は、以下の条件をすべて満たす親族のことです。

年齢:19歳以上 23歳未満
生計要件:所得者と生計を一にしている
所得要件:合計所得金額が58万円超132万円以下であること
(給与収入だけの場合、その年中の収入金額が123万円超188万円以下であれば、合計所得金額が58万円超
123万円以下となる)

簡単に言うと、一緒に暮らしている19歳以上23歳未満の家族で、所得金額が123万円以下の人ということになります。これは、大学に通うアルバイトをしている学生などが該当するケースが多いでしょう。

控除の仕組みと金額

従来の「扶養控除」と異なり、特定親族特別控除は、親族の合計所得金額に応じて控除額が9段階に分かれて段階的に設定されています。
また、合計所得金額が58万円以下の場合は、従来の特定扶養親族として63万円の扶養控除が適用されます。

合計所得金額が58万円を超えると、特定親族特別控除が適用され、所得が増えるにつれて控除額が減っていき、最大63万円から最小3万円までの控除を受けることができます。

特定親族の合計所得金額
(65万円の基礎控除後の金額)
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下63万円
85万円超 90万円以下61万円
90万円超 95万円以下51万円
95万円超 100万円以下41万円
100万円超 105万円以下31万円
105万円超 110万円以下21万円
110万円超 115万円以下11万円
115万円超 120万円以下6万円
120万円超 123万円以下3万円

新しい申告書が必要!

この「特定親族特別控除」の適用を受けるためには、給与の支払者に対して「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出することが必須となります。新しい申告書となるので、提出漏れがないように特に注意が必要でしょう。

年末調整手続きの留意点と簡素化の動き

大きな改正に伴い、手続き面でもいくつかの変更点があるので注意が必要です。

① 扶養親族等の所得要件の改正

基礎控除の見直しに伴い、扶養控除や同一生計配偶者、勤労学生などの対象となる親族の所得要件も引き上げられました。

扶養親族(改正前)48万円 →(改正後)58万円
配偶者特別控除(改正前)48万円超133万円以下 →(改正後)58万円超133万円以下
勤労学生(改正前)75万円 →(改正後)85万円

たとえば、扶養親族の所得要件は48万円から58万円に引き上げられたため、これまで扶養対象外だった親族が、令和7年からは新たに扶養控除の対象となるケースも出てきます。年末調整の前に、家族の所得状況を必ず確認してくださいね。

② 住宅ローン控除「調書方式」の導入

令和7年分の年末調整からは、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の手続きにおいて、「年末残高調書を用いた方式(調書方式)」が導入される人もいます。

【対象者】
調書方式に対応した金融機関等に対して「住宅ローン控除の適用申請書」を提出した人です。
【メリット】
この方式を適用できる人は、会社に提出する「控除申告書」に「年末残高証明書」の添付が不要となります。

まとめ:改正点を理解して、もれのない年末調整をしよう

令和7年の年末調整は、税制改正による変更が多岐にわたります。特に、「特定親族特別控除」は新しい申告書が必要になるため、申告忘れがないように気をつけたいですね。

年末調整は税金を正しく精算し、還付金を受け取るための大切な機会です。改正ポイントをしっかり押さえ、早めに準備に取り掛かることで、気持ちよく年末を迎えましょう。ご不明な点があれば、会社の経理担当者・労務担当者に相談してみてください。