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「終活」で家族に負担をかけない!エンディングノートの賢い書き方

終活(しゅうかつ)と聞くと、少し気が重いと感じるかもしれませんね。しかし、終活の目的は、「人生の最期に向けて、残される家族の負担を減らすこと」に尽きます。その中心となるのが、あなたの「最後の取扱説明書」であるエンディングノートです。

親が亡くなった後、「銀行口座が分からない。」「パスワードが不明だ!」「お葬式はどうするの?」といった「困った!」が、家族にとって大きなストレスになります。この記事では、ファイナンシャルプランナー(FP)が、エンディングノートを効果的に活用し、家族を安心させるための賢い書き方を具体的に解説していきます。

エンディングノートと遺言書の違い

終活でよく混同されがちなのが、エンディングノートと遺言書です。この二つには、次のような違いがあります。

エンディングノートの役割(想いの伝達)

エンディングノートは、法的な効力を持たない自由な形式の「メッセージ集」です。

目的
家族への感謝のメッセージ、医療・介護への希望、葬儀やお墓の希望、連絡先リスト、デジタル資産のパスワードなど、法律で定められないあらゆる情報や想いを伝えるために役立ちます。
作成
いつでも自由に書き加えたり、修正したりできます。

遺言書の役割(財産の決定)

遺言書は、法的な効力を持つ文書です。

目的
誰に、何を、どれくらい相続させるかという「財産の分け方」を法的に決定するために作成します。遺言書の内容は、法定相続分よりも優先される力が伴います。

形式
自筆証書遺言や公正証書遺言など、法律で定められた厳格な形式を守る必要があります。

エンディングノートに書くべき項目

エンディングノートを家族が本当に役立つものにするためには、特に以下の4つの項目を重点的に記入しましょう。

医療・介護に関する希望

あなたが病気や要介護状態になったときに、どのような治療やケアを受けたいかを明確にしておきます。
・延命治療の希望
・かかりつけ医や持病の情報
・希望する介護施設や介護サービスの種類

家族は、いざという時、あなたの代わりに決断しなければなりません。私も経験がありますが、親の命に係ることを決断するのは非常に怖い経験でした。事前に希望を伝えることで、家族の精神的な負担を少しでも減らしてあげてください。

葬儀の規模、形式(家族葬、一般葬、直葬など)

呼んでほしい人や連絡しないでほしい人、希望する宗教・宗派、お墓の場所などを明確にしておいてください。

「シンプルでいい」と書いておくだけでも、家族は高額な葬儀社との交渉に悩まずに済むはずですよ。

デジタル資産の情報

現代の終活で最も見落とされがちなのが、デジタル資産です。
スマートフォンやパソコンのロック解除方法、ネット銀行や証券口座のIDとパスワード、SNS(Facebook、Xなど)やブログのアカウント情報、サブスクリプションサービス(動画配信、有料アプリ)の契約情報など、近年、重要な情報はすべてデジタルデータで保存されたり、IDやパスワードが必要となります。

デジタル資産そのものを中止・廃止していくことも就活のひとつです。

重要な連絡先リスト

あなたの死後、家族がすぐに連絡を取ってほしい相手をまとめておきましょう。
親戚や友人、仕事関係者など、訃報を知らせるべき人の氏名と連絡先。
保険会社、証券会社、銀行の担当者名と電話番号。
契約している税理士、弁護士、司法書士などの専門家などをリストにしてまとめておくと、連絡がスムーズに取れるでしょう。

「財産目録」を正確に作るコツ

財産目録の作成は、エンディングノートの中でも最も手間がかかりますが、家族の負担を減らすために重要な作業となります。

プラスの財産(資産)マイナスの資産(負債)
【預貯金】 銀行名、支店名、口座番号、名義、残高【借入金】 住宅ローン、個人からの借金、カードローン残高
【有価証券】 証券会社名、口座番号、保有銘柄【未払金】 医療費、公共料金、税金で未払いのもの
【不動産】 所在地、種類(土地、建物)、権利証の保管場所【保証債務】 他人の借金の保証人になっている場合

財産目録を正確に作るための工夫

  • 預金残高や株価は日々変動しますので、記入するのは概算で構いません。重要なのは「どこの銀行に口座があるか」という情報なのです。
  • 預金通帳や保険証券のコピー(あるいは写真)を添付することで、口座情報や支店名を一瞬で伝えることができます。
  • 財産目録そのものに加えて、「どこに(金庫、引き出しなど)何(証券ファイル、通帳)があるか」を詳細に記すことで、探す手間を省けます。

家族の負担を減らすための情報整理法

①情報を一箇所にまとめる
エンディングノートの効果を最大限に引き出すためには、「情報への見つけやすさ」が鍵となります。
エンディングノート、通帳のコピー、権利証、生命保険証券など、重要書類の保管場所を一箇所に集約させましょう。そして、その保管場所を家族全員が知っていることが大切です。

②定期的な見直しを習慣化する
エンディングノートは一度書いたら終わりではありません。金融機関の口座を解約したり、パスワードを変更したり、考え方が変わったりすることがありますので、定期的に見直しをしてください。
年に一度(誕生日や年末など)、「エンディングノートを見直す日」を設けることで、情報を常に最新の状態に保つことができますよ。

③実行者を指名する
エンディングノートの冒頭に、「私の死後、このノートを読んで実行してほしい人(キーパーソン)」を明確に指名しておきましょう。
これにより、誰が中心となって手続きを進めるべきかが明確になり、家族間の役割分担の混乱を避けられます。

まとめ:エンディングノートは「安心」への投資

エンディングノートは、あなたの人生を振り返るツールであると同時に、愛する家族への「安心」という名の贈り物となります。
法的効力はありませんが、家族の「何をすればいいかわからない」という大きな不安を解消し、スムーズな手続きへと導くことができます。この機会に、今日から少しずつ、あなただけのエンディングノートの作成を始めてみませんか。