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【保険を分かりやすく解説】死因1位のがんに備えるがん保険とは?

【保険を分かりやすく解説】死因1位のがんに備えるがん保険とは?

日本人の死因ランキングで、長年1位を独走している病気をご存じでしょうか。それが「がん(悪性新生物)」です。テレビやニュースで「2人に1人ががんになる時代」というフレーズを耳にし、漠然とした不安を抱いている方も多いかもしれませんね。

しかし、医療技術の進歩により、がんは「不治の病」から「長く付き合う病」、あるいは「治る病」へと変化しています。そこで重要になってくるのが、治療期間中のお金をどう支えるかという問題なのです。

公的医療保険だけではカバーしきれない部分を補い、闘病中の生活を守るためのがんに特化した保険、それが「がん保険」です。

この記事では、がん保険がなぜ必要なのか、普通の医療保険とは何が違うのか、そして最新の治療トレンドに合わせた賢い選び方を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点からわかりやすく解説していきます。

がんは日本人の2人に1人がなる病気?

まずは、敵を知ることから始めましょう。がんという病気が、私たちにとってどれくらい身近で、実際にお金がどれくらいかかるものなのか、データを基に紐解いていきます。

「2人に1人」は決して大げさな数字ではない

国立がん研究センターの統計によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性で約65%、女性で約51%と言われています。これは、まさに2人に1人、あるいはそれ以上の確率で罹患する「国民病」と言っても過言ではありません。

日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2021年データ)
男性63.3%(2人に1人)
女性50.8%(2人に1人)

日本人ががんで死亡する確率は(2023年データ)
男性24.7%(4人に1人)
女性17.2%(6人に1人)

出典「国立研究開発法人国立がん研究センター」

しかし、過度に恐れる必要はありません。診断技術や治療法の進化により、早期発見・早期治療ができれば、5年生存率は飛躍的に向上しています。つまり、私たちは「がんにならないこと」を祈るだけでなく、「なった後にどう生きるか」を考えておく必要があると言えるでしょう。

治療費だけではない?見落としがちな「がんの出費」

「日本には高額療養費制度があるから、医療費はそんなにかからないはず」と思っていませんか。確かに、公的制度のおかげで、病院の窓口で支払う治療費自体は、月額数万円〜10万円程度(所得による)に抑えられるケースが一般的です。

ところが、がん治療の現実はもっとシビアです。抗がん剤治療などにより治療が長くなると、公的保険が効かない出費が、家計をじわじわと圧迫するのです。

差額ベッド代: 個室を希望した場合の費用(全額自己負担)
通院交通費・宿泊費: 遠方の専門病院へ通う場合の移動費
アピアランスケア: 抗がん剤の副作用による脱毛に備えたウィッグや、肌のケア用品
健康食品・サプリメント: 体力を維持するための食事療法など

さらに最も気を付けたいのが、治療による「収入の減少」です。体調不良で残業ができなくなったり、休職を余儀なくされたりすることで、入ってくるお金が減るのに、出ていくお金(治療関連費)は増えるという、二重の負担が襲ってくる可能性があります。

医療保険とは何が違うの?がん保険だけの「強み」を徹底解剖

「普通の医療保険に入っているから大丈夫」と考えている方もいるでしょう。しかし、がん保険には、一般的な医療保険にはない、がんという病気に特化した「強み」が存在します。

① 「がん診断給付金」というまとまった一時金

がん保険の最大のメリットとも言えるのが「がん診断給付金(一時金)」です。これは、医師から「がんです」と診断確定された時点で、50万円や100万円といったまとまった現金が、一括で受け取れる仕組みのことを指します。

【使い道が自由】
治療費の支払いはもちろん、当面の生活費、子どもの教育費、あるいは治療によるストレス発散のための旅行費など、何に使っても構いません。

【精神安定剤になる】
「手元に100万円ある」という安心感が、治療に向き合う精神的な余裕を生み出してくれるのです。

一般的な医療保険の手術給付金や入院給付金は、「治療した後」でないと受け取れませんが、診断給付金は「治療を始める前(または直後)」に受け取れるため、治療をスタートさせるための資金として非常に優秀だと言えます。

② 入院日数の「無制限」保障

通常の医療保険では、入院給付金の支払限度日数が「1入院あたり60日まで」などのように制限されていることがほとんどです。

一方、多くのがん保険では、がんによる入院に関しては「支払い日数が無制限」となっています。がんは再発や転移のリスクがあり、入退院を繰り返したり、長期間の入院が必要になったりするケースも珍しくありません。そんな時でも、日数を気にせず保障を受けられるのは、がん保険ならではの特権でしょう。

③ 保険料払込免除の特約

がんと診断されたら、それ以降の保険料の支払いが免除され、保障は一生涯続くという特約を付けられる商品が多くあります。

「働けなくなって収入が減ったのに、保険料を払わなければならない」というリスクを回避できるため、この機能はがん保険において非常に重要な役割を果たすことになるのです。

入院から通院へ!変化する治療スタイルに合わせた賢い選び方

ひと昔前のがん治療といえば、「長期間入院して手術する」のが一般的でした。しかし、医療の進歩とともに、そのスタイルは劇的に変化しています。これからがん保険を選ぶなら、この「最新トレンド」を押さえておくことが不可欠です。

「通院治療」が主流の時代へ

現在は、入院期間をできるだけ短くし、「通院」で抗がん剤治療や放射線治療を行うスタイルが主流になってきています。働きながら治療を続ける人が増えているのも、このためです。

昔のがん保険に入りっぱなしになっていませんか?古いタイプは「入院しないとお金が出ない」ものが多く、現在の治療実態に合っていない可能性があります。

通院給付金: 通院日数に応じて支払われるもの
治療給付金: 抗がん剤や放射線治療を受けた月に、定額(例:月10万円)が支払われるもの。

これらが手厚い商品を選ぶことが、現代のがん対策の鉄則と言えるでしょう。

「先進医療」への備えは必須か?

がん治療の選択肢として、公的保険が適用されない「先進医療」(重粒子線治療や陽子線治療など)を提案されることがあります。これらは技術料だけで約300万円前後かかることもあり、全額自己負担となります。

この高額な費用を実費保障してくれるのが「先進医療特約」です。保険料は月額100円程度と非常に安価なケースが多いため、私は「とりあえず付けておく」ことを推奨します。使う確率は低くても、選択肢をお金の理由で諦めないための「お守り」として機能します。

最近では、公的保険適用外の「自由診療」(未承認の抗がん剤など)にかかった費用まで補償する、実費補償型のがん保険も登場しています。
保険料は高くなりますが、「世界中のあらゆる治療法から、最善のものを選びたい」という強い希望がある方にとっては、検討する価値のある選択肢となるはずです。

あなたには必要?不要?ライフステージ別のがん保険活用術

「がん保険が良いのはわかったけど、自分に必要なの?」と迷う方もいるでしょう。貯蓄状況や働き方によって、必要性は異なります。ライフステージ別の考え方を見てみましょう。

① 自営業・フリーランスの方:優先度【高】

会社員と違い、自営業の方には、病気で休んだ際の所得補償である「傷病手当金」がありません。がん治療で働けなくなると、即座に収入がゼロになるリスクがあります。

治療費だけでなく、生活費をカバーするために、診断給付金(一時金)を多めに設定したプランが必須と言えます。

② 小さな子どもがいる子育て世帯:優先度【高】

親ががんで倒れることは、家計にとって緊急事態です。治療費はもちろん、子どもを預けるためのベビーシッター代や家事代行費など、思わぬ出費が発生します。

貯蓄を取り崩して教育資金が不足するのを防ぐためにも、がん保険で現金を確保し、「家族の生活を守る」ことを考えましょう。

③ 貯蓄が十分にあるシニア世代:優先度【中~低】

十分な老後資金があり、数百万円の治療費を即座に支払っても生活に影響がない場合は、必ずしもがん保険は必要ないかもしれません。
ただし、「せっかく貯めた老後資金を治療費で減らしたくない」と考えるなら、掛け捨てではなく、使わなければお金が戻ってくるようなタイプや、一時金のみのシンプルなプランで資産を守るのも一つの手です。

まとめ:がん保険は「治療の選択肢」と「時間」を買うもの

がん保険は、単にお金を受け取るためのものではありません。
「お金がかかるから、この治療は諦めよう」
「お金がないから、無理して働かなきゃ」
そういった経済的な理由による制限をなくし、「納得のいく治療を選ぶ権利」と「治療に専念できる時間」を買うためのものなのです。

2人に1人ががんになる時代だからこそ、「もしも」の時に自分と家族がどうありたいかを想像し、元気なうちに備えを検討してみてください。